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書評<戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―>

手柄より死を恐れ、領土の安堵を求めた武士たち。悪人ばかりではなかった「悪党」。戦争大好きな朝廷の公家たち。戦時立法だった一揆契状など、南北朝以後の本当の日本の戦争の姿を、固定された歴史観から解放し問い直す。

太平洋戦争以後の近代史以後の知識しかないので、大河ドラマ視聴を中心に日本の中世を勉強し直しているが(笑)、その中でも呉座氏の著書は面白く、かつ信頼できると思っている。本書は著者の歴史解説書の中でも、南北朝以後の戦争の実態を一次資料を見直しながら検討し直したものである。
著者がたびたび指摘するのは、下剋上に代表される、2次大戦後の日本史研究の固定化された歴史観だ。社会主義、共産主義の理想が歴史の解釈に入り込んできた時代ゆえ、「ゲリラ戦で荘園の武士を打ち倒す」「戦争におたおたする公家さん」といった歴史解釈がなされたというのだ。著者は複数の資料を突き合わせ、その資料が書かれた年代と背景を検討し直すという作業のうえで、中世の戦争の実態を描き出すことに成功している。武士は悩み、公家は武力を行使し、僧侶も土地を支配する。教科書で習った浅い知識しかない自分には、目からウロコが落ちる解釈である。
それには著者の個性も必要だったと思われる。「野戦でゲリラが正規軍にかなうわけない」といった近代の戦争の知識も本書には必要だったのだと思う。戦争を忌避する学者に、500年以上前とはいえ歴史は語れない。ミリオタにとっても、抜群に面白い本だ。


初版2014/01 新潮社/新潮新書(kindle版)

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