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2018.08.16

書評<八九六四 「天安門事件」は再び起きるか>

1989年に起きた「天安門事件」は、現代中国においてもっともタブーな事件であることは間違いない。中国の歴史の中でもっとも民主化に近づき、政府と軍が弾圧したその事件は、中国という国家と、天安門事件に関わった人たちにとって、大きなターニングポイントとなった。本書は天安門事件に関わった人たち、リーダー格の人間からデモに参加した「普通の市民」たち、当時の中国にいた日本人留学生など、多様な人たちのインタビューを通して、天安門事件とは何だったのか、天安門事件は現在の中国に、そして世界にどんな影響を与えたのか考察する。

天安門事件当時、デモの参加者は学生が中心で、著者がインタビューした2010年~2015年前後には50歳前後になっている。デモの参加した人物たちはいまや世界の経済をリードする中国でそれなりの地位に就いている。彼らは世界情勢に関心がある他国の市民よりも、天安門事件を醒めた目で捉えている。「若気の至り」だったわけだ。
一方で、天安門事件をその後ネットで知った人物たちの置かれた現状と、考え方の方が興味深い。天安門事件をある種美化し、ネットで過激な意見を発信し、当局に目をつけられたりする。
著者も指摘しているが、日本の学生運動の挫折や、ネット右翼の台頭に奇妙な類似を感じる。市民と国家の関係は、共産主義であろうと民主主義であろうと変わらないのか?思想的な考察は本書の管轄外だが、非常に興味深い現象を著者は見出すことに成功している。
日本からは著しい経済発展に目がいきがちだが、天安門事件後、中国も指導者の複数の交代があり、揺らぎがあったのも事実。統制が厳しい習近平体制の後、中国はどこにいくのか?共産党一党支配というなの人治政治の行方は常に追っていかなければならないと感じさせる一冊である。


初版2018/05 角川書店/kindle版

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