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書評<東欧サッカークロニクル>

著者は東欧(クロアチア、後にリトアニア)の現地に居をおくサッカージャーナリスト。それゆえ、現地のナマの情報に触れる機会も多く、サポーターとの距離も近い。その著者が、決してクリーンとはいえない東欧サッカーの現場を渡り歩き、リポートしてきたコラムをまとめたものが本書である。

1989年末の東欧革命以後、バルカン半島におけるユーゴスラビア連邦の崩壊はじめ、そこに住む人々は過酷な時間を過ごしてきた。それはサッカー界も変わらない。サッカーに対して熱狂的な国民性ゆえ、それが頻繁に政治的に利用される旧ユーゴスラビア諸国。大国の論理に翻弄される民族と小国家たち。サッカーが国におけるナンバーワンスポーツではないゆえ、経済的に困窮する小さなクラブ。いまや巨大ビジネスの場と化した西欧のビッグクラブとリーグのすぐ隣に、まったく異質な世界が広がっているのだ。
民族の自立という、民主主義の根本に従って小国家が乱立する東欧の現実をサッカーを通して知ることができる一冊である。ただし、「クロアチア人の国民性」といったステレオタイプな著者の言質が少し気になるところである。

初版2018/05 カンゼン/ソフトカバー

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書評<辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦>

辺境探検家の高野秀行氏と、歴史学者の清水克行氏が同じ本を読み、感想を議論していく対談本。大長編で名著の「大旅行記」、「世界史の中の戦国日本」など、様々な要素を含む歴史や紀行本を中心に、著者の主張やその主張が現代で意味するところを探っていく。

高野秀行氏はビルマやアフリカの奥地をはじめ辺境を渡り歩き、現地のリアルな習慣や伝説を知る人物。清水克行氏は日本中世史を学術的に研究する学者。異色ながら、様々な知識と経験を持つ2人がお互いに課題図書を提案し、読書する。意外なところで日本と世界の共通点を見つけたり、かなり異端な説を唱える本でも、読み解けば意外に正しい説かも、と思えたり、この二人ならではの解釈が面白い。ある程度の教養を身につけて、知識の土台がある2人だからこそ、議論が噛み合っていくのだろう。本の読み方を教えてくれる1冊である。

初版2018/04 集英社インターナショナル/ソフトカバー

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F-14A”IIAF”Completed

ファインモールド1/72グラマンF-14Aトムキャット”イラン空軍仕様withHAWK SAM”完成しました。
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F-14Aは言わずと知れたVG翼と優れた火器管制装置を搭載する艦上戦闘機です。F-111開発計画の挫折後、グラマンはそこで培った技術を投入して新しい艦上戦闘機の開発を急ぎますが、価格高騰で倒産の危機。それを救ったのが王朝時代のイランでした。防空戦闘機としての高い性能に注目してF-14Aを購入し、グラマンを救ったたイラン空軍ですが、その後のイスラム革命で導入計画は頓挫。

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アメリカとの国交断絶により、高性能戦闘機の整備パーツなどの購入先を失ったイランですが、裏ルートでパーツを入手、イラン・イラク戦争にF-14Aを投入し、多くの戦果をあげます。さらにもともと工業技術も高いイラン、トムキャットを飛ばし続けるための改良を続け、しまいにはSAMであるHAWKをAIM-54フェニックスの代替えとして搭載しさせます。

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キットはファインモールドの新商品をストレート組み。複雑な構成を持つトムキャットは各メーカーがそれぞれ特徴あるキットを発売していますが、組み易さでいうとベスト。さすが最後発だけあります。ハセガワなどと比べると、昨今の中華キットと似た立体感ある彫刻が特徴。ソリッドモデルのようなスリークさを求める向きには依然としてハセガワのキットの方が良いかと。

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今回は大日本絵画の資料本で話題になった、本来はSAMであるHAWKを搭載した仕様を製作。マエストロモデルというメーカーのレジンパーツを使用しています。テイルフィンは使い物にならず、プラ板にて製作。面倒でしたが、迷彩塗装と相まって、独特のIIAF仕様の雰囲気が出せたのではないでしょうか。


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迷彩用の塗料とデカールは共にモデルカステン製を使用。マスキングも前述した資料本のコピーを使用しており、大日本絵画に頼り切ったモデルリングです。

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マガジンキットからの経緯があり、ファインモールドの姿勢にいまいち納得していないのですが、まあ良キットであることは確か。ハセガワのキットと適宜使い分けていきましょう。


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書評<【中東大混迷を解く】 シーア派とスンニ派>

1990年代以降、次々に不安定化していく中東諸国。その原因として、”宗派対立”を中心にもってくる論者は多い。いわゆるシーア派とスンニ派の対立である。人々が妥協することが出来ない宗教派閥を中東の混乱の根本要因の1つとして据えると、確かに複雑な中東情勢を「理解したつもり」になれる。果たしてそうなのか?気鋭の中東学者が、中東の混迷の要因として宗派対立を解説する。

著者の「スンニ派とシーア派は宗派として対立しているわけではない。なぜなら、どちらの宗派とも相手を改宗しようとしているわけではないからである(要約)。」との一文が、我々の大いなる誤解を解いてくれる。経済、氏族、領土、資源など様々な利害対立をまとめているのがスンニ派とシーア派であるだけなのだ。もっといえば、イランとサウジアラビアという大国の中東における覇権争いが、「宗派」の名を借りているともいえるのだ。民主化や世俗化の度合いとか、イスラム教の原典への回帰など”イスラム教の論理”で語られがちな中東情勢の理解の幅を拡げてくれるテキスト的な一冊である。

初版2018/05 新潮社/新潮新書

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書評<シネマの神は細部に宿る>

押井守カントクが対談形式で映画を批評するコラムエッセイ集。今回は、映画が覗かせる”フェチ”を取り上げる。女性、衣装、銃火器、航空機などなど。映画製作者がこだわりぬき、映画を見た者に鮮烈な印象を残す”小道具”について、好き勝手に語っていく。

押井カントクでなくても、クリエイターなら「神は細部に宿る」を実践している人も多いだろう。本書は映画そのものの印象すら変えてしまう小道具や俳優たちを語っていく。そこは押井カントクなので非常に偏っているのだが、「そこまで考えて映画作っているのか!」と唸らされることしきりなのも確か。それと、押井カントク、けっこう他作品からいろんな要素引用してるのね。日本の稀にみるクリエイターでも、膨大な映画鑑賞が血肉となっているのだ。ある程度年齢を重ねると好みが固定されてくるものだが、玉石混交で様々な作品を鑑賞することが必要なのがよく分かる。

初版2018/08 東京ニュース通信社/ソフトカバー

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書評<ロシアW杯総論>

その昔は「サッカーのトレンドはワールドカップごとに変わる」といわれていた。しかし近年、欧州ビッグクラブに資金、選手、指導者が集まることにより、チャンピオンズリーグが世界のサッカーの最先端となった。それでも、ワールドカップには独特の熱狂と、世界の特徴あるサッカーを見ることができる。本書はグループリーグの試合からすべてをテレビ観戦した著者が、ロシアW杯のピッチ上で何が起こっていたかを描き出す。

本書はいわゆるマッチリポートではない。ワールドカップの1試合、1試合を観戦したうえで、参加国がどんな準備をしてロシア大会に臨み、どんな結果を残したか、全体的な傾向を持っていたかを解説していく。弱小国と言われながら上位進出を果たした国々の武器はなんであったか?早期敗退した強豪国には何が足りなかったか?それはまさに日本代表にも通じることであり、足りないものを補えば、日本サッカーは階段をもう一歩登れるだろう。もっとも、それが一番難しいのだが。

初版2018/08 カンゼン/ソフトカバー

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