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書評<細胞内共生説の謎: 隠された歴史とポストゲノム時代における新展開>

地球上の単細胞、多細胞生物にはあまねく細胞内に小器官を抱えている。それらは原初の細胞形成時代に、細胞内に別の細胞を取り込み、共生をはじめたとの考え方が現在の定説である。特にミトコンドリアと葉緑体などの色素体に関しては、小器官がDNAを抱えていることから、定説の根拠となっておる。この細胞内共生説はどのようにして学界の定説となったのか、1900年代以降の研究の歴史を紐解いていく。

現役の細胞学の先生が著者ということで、ポピュラーサイエンス以上、専門書以下という立ち位置の本だが、専門的で難解な部分はゲノム解析が主で、全体としては歴史書に近い本である。ロシアの生物学者が細胞内共生説を唱え、現代の細胞内共生説の祖ともいえるマーギュラスがどのような事実を根拠に研究発表したのか?そしてゲノム解析が急速に進んだ現代において、ゲノム解析から細胞内共生説を補強したのか、再考を促したのか?様々な視点から細胞内共生説を取り扱っている。生命の創生に関わる地球科学のマクロの視点から、ゲノム解析によるミクロの視点への移行は興味深い。また、学者の個性が大いに定説の定着や否定に関わるという事実は、とかく”エビデンス”にこだわりがちな現代の科学で再考されるべき視点であろう。
本書の著者もまた個性的な方であることも想像できる、読む解くのに時間はかかるが興味深い生物学の書である。

初版2018/06 東京大学出版会/ハードカバー

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