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2019.01.12

T-1B Completed

プラッツ1/72T-1B、完成しました。
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T-1Bは富士重工にて開発された国産初のジェット練習機。国産初のジェットエンジンを搭載した中等練習機でもあります。
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キットはプラッツのオールニューキット。スジ彫りはやや深めでメリハリのあるパーツ割りにまったく問題はなく、オレはストレート組みでじゅうぶん満足。プラスチックの固まりをオモリとして機首に仕込むように指示がありますが、やや心もとないので、オモリを少し足しておくのが吉かと。

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塗装は飛行実験団のマークをチョイス。カルトグラフのデカールでほぼマーキングを再現できますが、翼端の識別オレンジと機首のアンチグレアは塗装に変更しています。カルトのデカールは程よく硬く、ソフターにも馴染むので、胴体や主翼のラインもしっかり再現できます。

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初期の小型ジェット機の美しいラインがよく再現されており、誰にでもおススメできる良キットです。みんなで買って作って、次はプラッツさんにC-1の開発をお願いしましょう。

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2019.01.09

書評<改訂新版 新書アフリカ史>


アフリカ大陸の歴史というと、多くは“暗黒の大陸に進出した”ヨーロッパ諸国の目線で書かれたものが多い。ヨーロッパ人によって文明がもたらされ、そして資源や奴隷を収奪したという歴史観だ。だが、紀元前からアフリカでは様々な氏族、部族、王族が立ち上がり、群雄割拠した独自の歴史があった。多くは文字にして残されていない、伝承としての歴史をまとめ、ヨーロッパ人の歴史観とは一線を化した通史解説に本書は挑戦する。

アフリカ大陸のすべて未開拓地で、“文明的に遅れた”黒人が暮らしていたという、暗黒大陸の歴史を覆すエピソードをまとめた歴史書である。一口にアフリカといっても、海岸線、ジャングルの奥地、サバンナなど、様々な環境が共存しており、人々はそうした過酷な大地に適応するように歴史を刻んできた。それをすべてひっくり返すのがヨーロッパ人の到来である。ポルトガル、スペインなど、初期の大航海時代の中心となった国々はまだアフリカ人たちと共存共栄する場面もあったが、やがて産業革命により飛躍的に科学技術を発展させたヨーロッパの国々はアフリカ大陸を蹂躙するようになる。今となっては言語道断の所業であり、現在のアフリカ大陸の政治的・経済的混乱の根本的な要因といえる。それは“勝手に国境線を引いた”といった単純な問題ではない。

また、本書は10数年前に刊行された新書の改訂版で、新章として近年の経済的発展やジェンダーの問題にも触れている。ただし、それは現実とはいえない近代的な価値観でまとめられており、まだまだ人権という概念からは程遠いアフリカの国々の国民あるいは難民が多数存在する。そこはもっと構成を考えるべきであろう。


初版2018/11 講談社/講談社新書

2019.01.08

書評<死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相>

1959年、フルシチョフ政権下のソ連・ウラル山脈で大規模かつ謎に包まれた遭難事故が発生した。深い積雪の山中で、登山チームの9名がベースのテントを離れて靴も履かず、薄着で死亡しているのが発見されたのだ。しかも、テントは整理整頓されており、ガスコンロは湯を沸かそうと準備されたままであった。今もオカルト案件として語り継がれる事件を、カリフォルニア在住のノンフィクション作家が現地に赴き、事故と同じ状況下での登山を試みることにより、多くの謎に挑んでいく。

本書は3つの軸を持って、事故の再現と謎解きに挑む。2つは過去の時間軸。登山チームと事故後の捜索チームの動向を詳細な記録から再現していく。1つは著者が現在の時間軸で事件解明を試みる。まるで登山チームのそばで彼らを見ているような錯覚と、著者の視点で謎多き国で現地捜査をしているかのような錯覚に陥り、本書の内容にみるみる引き込まれる。2つの時間軸、1959年と2009年の時間軸がそのまま、ソ連とロシアの状況や空気感を浮き彫りにしているのも興味深い。
読後、事故当時の状況と発生原因の解明そのものはあまり重要でないと感じるほど、様々な要素が詰まった1冊である。

初版2018/08 河出書房新社./ハードカバー

2019.01.07

書評<タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源>

タコに代表される頭足類は、地球上の動物の中でもかなり特殊な存在である。一般に知能が高く、意識を持つとされるのは哺乳類に代表される脊椎動物であるが、タコもそれを持つとしか思えない行動を取る。本書はタコとコウイカの行動を様々な角度から検討することにより、タコが進化の途上でどのような能力を獲得してきたかを検討する。

タコは多彩な能力を持つ不思議な動物だ。8本の足を自在に操り、およそ定形をもたず、皮膚の色を周囲に合わせて変化させる。脳と頸椎の一元的なコントロールの配下にある脊椎動物とは対称的に、8本の脚に分散された非常に太い神経系統を持ち、その行動は驚くほど”人間的”だ。本書の著者は哲学者であるため、そうしたタコの特徴を”意識”に中心点をおいて解明していくが、もちろんそこには進化論的、生物学的なタコの特徴の検討が必須であり、身体的、意識的特徴を全般的に取り扱う。そして頭足類の獲得した「意識」と、人間が持つ「意識」を比較検討することにより、地球上の進化の道筋が1つではなかったことを明らかにしていく。
生物の精神面の進化について、新しい視点を与えてくれる1冊だ。

初版2018/11 みすず書房/ハードカバー

2019.01.06

書評<反ワクチン運動の真実: 死に至る選択>

様々な感染症を医療の発展により克服してきた人類。その中心的な存在はワクチンである。いわゆる先進国では、種痘をはじめとしてワクチンを乳児・幼児期までに接種し、集団的免疫を得る。
しかしながら近年、世界的にワクチン接種を拒否する親たちの存在が問題となっている。費用の問題ではない。自閉症など深刻な副作用を心配してのことだ。そこには親が子を思う心につけこむ、社会運動家や医療従事者の存在があった。本書はアメリカにおける反ワクチン運動の歴史を辿り、その危険性を明らかにしていく。

現代における医療の論争の一つが、ワクチン接種を巡る問題だ。日本でも近年、子宮頸がんワクチンの副作用が問題となり、接種が中止された。だが、それは統計的な検討ではなく、ヒステリックな扇動を行う社会運動家と、マスコミ報道によるものであった。
このような反ワクチン運動は今に始まったことではない。アメリカやイギリスでは20世紀初頭から、反ワクチン運動が存在した。初期のワクチンには確かにインチキで、危険なものもあり、深刻な副作用も存在した。だが、そうした初期のワクチン開発期を乗り越えた後も、反ワクチン運動はなくなることはなかった。統計上、どうしても発生する副作用を発症した親が社会運動家となり、専門的な知見を持たない医者と組んで、ワクチン製造会社を”告発”する。科学的な反証を受けてもなお、運動家たちは意見を曲げることはない。彼らは感情を煽り、善意の顔をして我が子を心配する親たちにつけこむのだ。代償は、克服したはずの感染症の復活である。
本書はこうした反ワクチン運動の実態を暴いていく。ワクチン接種は製造会社の利益のために政府と組んだ陰謀でもないし、感染症はそこにある危機なのだ。
世界に溢れる陰謀論や感情論を克服し、ワクチン接種に対する冷静な態度を取り戻すための1冊である。


初版2018/05 地人書館/ハードカバー

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