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書評<ファンタジーランド―狂気と幻想のアメリカ500年史>

アメリカ合衆国は、人々がそれぞれに幻想を抱きながら生きる”ファンタジーランド”である。そもそも、移住のごく初期、イングランドからアメリカに渡った人々は独立を尊重するプロテスタントの中でも、特に幻想を抱いた異端宗派の集団だった。また、入植者たちはアメリカには黄金があり、開拓すべき土地があるという幻想を抱いて故郷を離れた。そのような国家の成り立ちから、アメリカは合理主義よりも幻想あるいは反知性主義に傾きがちな国民の集団となり、ネット社会となった昨今、それが極まり、トランプ大統領の誕生を促した。本書はアメリカの歴史がいかに幻想に支配され、強化されてきたかを検証する。

プロテスタントとカトリックの違いは、キリスト教徒以外には分かりにくい。だが、その理解こそがアメリカという国の理解の第一歩である。プロテスタントは誕生した時から精神的に純粋で、分権的で、真実の発見を教会ではなく個人に委ねた。それゆえ、初期に入植したアメリカ人たちは新天地に幻想を抱き、”約束の地”の発展を実現しようとした。欧州では啓蒙主義が発展した時代に、ますますアメリカ人はキリスト教に情熱的になり、原理主義というべき福音主義を生み出した。一方でキリスト教を一種のショービジネスと捉え、信者を獲得してきた側面もある。時代が下ると、そこにラスベガスやディズニーランドといった幻想を産業化したブランドが現れる。アメリカ人は合理主義よりも、幻想と現実を行き来することを選んだのだ。
本書はこうしてアメリカが”ファンタジーランド”と化していく歴史を綴っていく。入植したごく初期から、文明は発展すれど、基本的にはアメリカがプロテスタントの国であり、聖書の国であることを再確認できる。世界を経済と軍事力で支配する大国は、決して合理主義や啓蒙主義が支配する国ではないのだ。アメリカ合衆国の歴史の別の一面を教えてくれる一冊である。

初版2019/01 東洋経済新報社/Kindle本

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