書評<脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年>
生物が単細胞として地球に生まれ、地球のあらゆる場所を席捲するようになったのは、「移動」という手段を進化させてきたからである。「繁殖」という生物の第一命題をクリアするには、移動し、生息地を増やすことが不可欠なのだ。本書は移動手段としての「脚、ひれ、翼」に注目し、その構造を解析、いかに海、陸、そして空を席巻するようになったかを解説していく。
本書の帯に「生き物の形を決めたのは物理だった」とあるが、本書のテーマを表す一文である。脚、ひれ、翼を詳細に解剖していくと、いかに地球の重力環境下で効率的に移動できるかが理解できる。単なる”姿かたちの印象”ではなく、数学的な解析をすることで、その進化がいかに巧みなものであったかが分かる。
本書はさらに、動かない生物である植物の移動手段、そして単細胞生物の線毛といった移動手段にも話が及ぶ。脚や翼に比較して単純な構造にみえるミドリムシの線毛も、その”パーツ”を分解していくと、たとえばミドリムシがおかれた環境下において、物理学にかなった構造をしているのだ。生物の進化の奥深さの一端を理解できる一冊である。
初版2019/03 草思社/ハードカバー
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