書評<人はどのように鉄を作ってきたか 4000年の歴史と製鉄の原理>
製鉄の歴史は紀元前に遡る。青銅時代の次の時代となる鉄器時代初期、人類はどのように鉄を作ってきたか?そして製鉄はどのように銑鉄と鋼鉄を作り分けるようになったか?そして日本刀の元となる製鉄である”たたら製鉄”とはどのような製法なのか?著者が実際に歴史的な製鉄施設を訪ね、ノウハウを研究し、そして近代以前から受け継がれるたたら製鉄とか何かを著者が実践し、日本刀に使われる特殊な鉄の製法を伝える。
本書はいわば”ロスト・テクノロジー”を辿る旅である。現在、建材や自動車に使われている鋼鉄は高炉で大量生産されており、少量の特殊な銑鉄、鋼鉄を作る技術は受け継がれていないのだ。著者は鉄鋼地の産地であるスウェーデンやドイツで初期で製鉄方法のノウハウを研究し紹介する。「鉄鉱石に炭あるいは石炭を加えて溶かし、鉄を精錬する」技術は空気の吹き込み方や高炉の高さなど、各地で独特の進化を遂げているのだ。
さらに、著者の研究は日本に伝統的に受け継がれる製鉄方法に及ぶ。へんくつな”製鉄おやじ”にいわば一子相伝の製鉄方法を教わる。その入れ込み方は尋常ではない。さらっと技術者と関係を築いたことを流して書いているが、著者の苦労は相当のものだと思われる。製鉄の貴重な歴史書である。
初版2017/05 講談社/ブルーバックス
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