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2019.06.23

書評<140字の戦争 SNSが戦場を変えた>

「SNSが世界を変えた」と言われて、まださほどの時間が経っていないが、SNSは既に戦争すら変容させつつある。領域国家vs非国家組織という非対称戦争がメインの戦争の形態のなりつつある昨今、戦争に関与する市民たちのSNSの投稿の影響力は絶大だ。本書はパレスチナ・ガザ地区へのイスラエルの航空攻撃、ウクライナ東部へのロシア軍の浸透といった事例を例にとり、Twitterに代表されるリアルタイムの情報発信がいかに戦争を変えたかを検討していく。

 

本書で検討されるTwitterその他のSNSによる情報発信が戦争に及ぼす影響で印象的なことは2つある。一つは戦争と同じような”非対称性”だ。イスラエルに爆撃されるパレスチナ自治区からの情報発信は、一般人であるがゆえに感情を揺さぶる。自治区の民兵たちも、感情に訴えるため、あえて悲惨な状況を投稿する。世界はイスラエルはなんと非人道的な行為をするのだ、と憤る。それに対し、イスラエルが国家として行う反論は、官僚組織や軍の組織ゆえの制限がある。フェイクニュースを意図的に流すのはさすがに抵抗があるし、ピクトグラムを使った分かりやすい状況説明も、少女の爆撃に対する悲鳴には叶わないのだ。

もうひとつは、SNS投稿の徹底的な分析が、ときに偵察衛星などの”国家的技術手段”では出来なかったことを可能にしたことだ。病的にデータ解析に執りつかれた一般人が、ロシア軍の兵士やその家族が撮影しネットに上げる写真を繋げ、ウクライナ紛争中のマレーシア航空機撃墜事件の”犯人”であるSAM(対空ミサイル)搭載車輛を特定したのだ。ここでも、市民のネット上の繋がりが国家が持つ手段を上回ったのである。

今後、国家による情報伝達の遮断あるいは偽情報の拡散が当たり前になってきたとき(すでに当たり前の国もあるが)、我々ネット民はいかに情報を捉え、判断していくのかが問われる。ネット閲覧で沸き上がる感情を抑え、情報を取捨選択することが重要になる。「誰かと戦っているような気分になること」を厳に慎むべきであることがキーであると思うのだ。

初版2019/05 早川書房/ソフトカバー

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