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2019.07.23

書評<エイズの起源>

1980年代、ニューヨークで突如出現したエイズ。最初はゲイのコミュニティを中心とした特殊な伝染病として危機感を抱かなかった世界だが、その感染性と致死率の高さが明らかになってくると、人類に対する大きな脅威と認識され、研究が始まる。エイズの原因がHIVウイルスと判定されると、その起源を追う努力も始まることとなる。本書は世界中の研究者が追ったHIVウイルス起源を追う研究をまとめ、パンデミックの謎にせまるものである。

 

HIVウイルスはチンパンジーの後天性免疫不全症候群を引き起こすウイルスを起源としている。遺伝子解析をはじめとした分子生物学でそこまでは追跡できる。だが、アフリカの奥地で暮らすチンパンジーのウイルスがヒトに感染したのはいつ、どこで?そして、どのようにして第一患者から、世界に拡散したのか。その疑問を解き明かすには、アフリカの植民地化のに伴う未開地医療、独立後は貧困に伴う売血と売春といった暗い歴史の研究が必然であった。植民地化によって、善意で為された医療行為がHIVウイルスを移動させ、遺伝子の多様化を招いた。さらに、南米のハイチの”援助”がウイルスをさらに蔓延させた。本書はそれらの歴史的事実を検証し、厳然たる事実を突きつける。文書にはまったく感情的な要素や表現はないが、HIVウイルスは人類の短期間で無計画な自然への侵入が招いた”罪と罰”といった暗い気分にさせられる。統計と確率に感情を揺さぶられる、すぐれたノンフィクションである。

 

初版/2017/07    みすず書房/ハードカバー

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