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2019.07.24

書評<「いいね! 」戦争 兵器化するソーシャルメディア >

Twitter、FacebookといったいわゆるSNSが登場して間もないが、すでに世界中の人々に必然とされるようになった。SNSは短い文章と、決定的な一瞬を切り取った画像で世界中の出来事を瞬時に拡散する。そしてそれは、人々の感情を揺さぶり、分断させる。そういった革新的な機構が、世界の紛争・戦争に影響を与えるのに時間はかからなかった。「こども兵の戦争」「ロボットの戦争」」といった”戦争の変わり目”を的確にしてきた著者が、あらたな現代の戦争のかたちと、それに対する勝利条件を提示する。

 

ISを中心としたテロリストたちと国家機構の戦争。イスラエルとパレスチナゲリラの長きに渡る戦い。ウクライナとロシアの領土紛争。SNSが出現した後に起こった紛争は、いずれもそれが大きな影響を与えた。ISは残酷な画像と同時に、現代の世界に不満を抱える人々に”国家に対抗する理由とその物語”を与え、新兵を勧誘した。パレスチナでは、少女が激しい空爆やそれに伴う破壊と犠牲を生中継し、イスラエルを国際社会から孤立させた。ウクライナ東部を巡る紛争では、ロシア政府が民間企業に情報操作を委託し、国際社会の情勢判断を混乱させた。いずれも、武力に関係ないSNSの書き込みが、戦争の行方に決定的な影響を与えた。いわば「いいね!」の数が勝利の必然条件になってきたのだ(何を戦争の勝利とするかは別の話)。本書はまず、そもそもインターネットとは何か?という問いから過去に遡り、先に上げた事例を分析しながら、”SNSの戦争”を分析していく。国家が押し通そうとする”経済的利益と正義による戦争”よりも、SNSで拡散する”物語としての戦争”を人々が優先する時代になった理由は何か。人間は理屈ではなく、感情に左右される動物であることを理解せねばなるまい。そしてSNSはその感情を増幅し、訴える力を増していくツールである。インターネットは、その登場当初にいわれたように、人々を統合する道具ではなくなった。SNSの登場で、むしろ人々を分断していく道具になったことを本書は訴える。SNSを立ち上げたシリコンバレーの”ビリオンダラー”たちが唱える理想は、いまや幻のものであることを人々は自覚せねばならないのだ。そしてシリコンバレーにも、我々にも、等しく判断と責任が求められる時代であることを、本書は提示する。我々は21世紀における最初の戦争の形態変化を目撃していることを突きつける一冊である。

 

初版/2019/06    NHK出版/ハードカバー

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