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2019.07.22

書評<三体>

文化大革命中の粛清により父を失い、自らも北京から地方に派遣された天体物理学者の葉文潔。彼女はやがて人民解放軍と党本部の運営する大型電波施設で働くことになる。文化大革命での為された数々の愚行により、人類に絶望していた彼女がそこでとった行動により、人類は絶望的な未来を抱え込むこととなった。時は過ぎて現代。その絶望的な未来が現実なものとなりつつあった。

 

アメリカで火がつき、日本語に翻訳された話題のSF作品。天体物理学の大問題をモチーフとし、銀河系星系にまで大風呂敷を広げ、サスペンスも盛り込む。至極まっとう、正統派のSF作品である。中国が抱えている暗い過去をプロローグとしている点で「よく政府の検閲とおったな」感もあり(共産党の文革と天安門事件の扱いの違いが垣間見ることが出来る)、このSFが中国でしか書けない理由も作品の中にしっかり盛り込まれており、なるほどアメリカでもヒットするはずだ。本作は三部作のスタートとなる作品であり、ここからさらに驚きの展開が待っているそうだ。今から楽しみである。

 

初版/2019/07  早川書房/ハードカバー

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