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2019.10.20

書評<日本軍と軍用車両>

旧日本陸軍は主力戦車をはじめ、ハード面・ソフト面とも連合国に比べ、たいへん貧弱な状態で日中戦争以後の戦争を戦った印象は否めない。戦車が”ブリキ缶”だけだっただけでなく、輜重を担う輸送車両、すなわちトラックでさえ、数が揃わず馬匹や人力に頼っていたことを戦記を読めば見て取れる。それは、軍首脳部が戦場の実際を軽視した結果なのか?本書は日本陸軍の軍用車両のごく初期の開発時から終戦時に至るまでの実相を分析し、日本の自動車史ともいえる軍用車両の歴史を検討する。

 

欧州の自動車の歴史が、馬車の延長線上にあることは自動車に詳しい人なら誰もが知ることだ。そして、欧州は馬車を運用するため、都市部を中心に道路事情が日本とはまるで異なっていたことが、そもそも日本の国土自体の”自動車化”を遅らせたことをまず指摘せねばなるまい。明治以後の急速な工業化ととも発展した航空機・内燃機動力艦船・自動車という”三種の神器”の中で、自動車の発展が極端に遅れたのは、日本のインフラの発達具合そのものに要因があったのだ。それでも、日本陸軍は中国軍やロシア軍との交戦を経て、自動車会社の育成を含めた各種軍用車両の調達計画を立てていた。車両規格を統一した「標準車両」を量産しようとした。精神論だけを唱えていたわけではないのだ。

だが、それでも製鉄を含めた工業インフラの遅れ、民間需要の少なさによる自動車産業の発達の遅れなど、様々な要因により、結局は何もかも揃わぬまま戦争を始めてしまった。そして貧弱な生産体制が、戦況が悪くなるにつれて航空機に資源をとられていき、何もかも行き詰まったうえでの敗戦であった。個々の軍用車両の性能の低さや無能な軍上層部が敗戦を招いたのではなく、日本のインフラの発達そのものが機械化された戦争に追いついていなかった。本書を読むと、そうした当たり前の結論にしか思い至らないというのが正直な感想である。

 

初版2019/09    並木書房

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