書評<家畜化という進化ー人間はいかに動物を変えたか>
人類は”最良の友”とされるイヌをはじめ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、トナカイ、ウマ、モルモット、マウスやラットといった哺乳類を家畜化してきた。その目的も食用、運搬、愛玩など様々である。基本的に警戒心が強い動物たちをどう馴らし、品種改良してきたのか?本書では動物ごとにその歴史を辿り、また家畜化を巡る実験を紹介しながら、人類が家畜化した動物たちの共通点と相違点、人類と共生する中で、互いにどういう影響を与えてきたか考察していく。
ホモサピエンスがその生存圏を拡げる過程において、家畜の存在は欠かせなかった。その家畜化の度合いは様々で、もはや人間の存在なくしては生きていけない種もあれば、ヒトから離れれば群れをつくり生きていくことが出来る種もある。家畜化にあたっては、まずヒトに対して警戒心を解き、”従順化”できる種が選ばれてはいるが、遺伝子の交配の妙により、従順化以外の特徴が野生種と家畜種に表現されているのが面白いところだ。”従順化”を表現化するDNAコードに体毛にブチ模様が現れる、しっぽが短くなるといった特徴を司る遺伝子が乗り合わせているのだ。イヌとラットはまったく異なる種であるが、ブチ模様が現れるところなどは共通しており、遺伝子が生命のセントラルドグマであることを強く感じさせてくれる。本書では家畜化した動物たちから人類へのフィードバックも考察されており、人類の”自己家畜化”も論じられている。
現在はエコロジストたちの声が大きな時代である。家畜化された動物を食べることを拒否する人間がいる一方で、病気の子供に勇気を与えるセラピー犬の存在が注目される時代でもある。家畜に対する価値観が変わる時代に、家畜の進化を考察する本書は共に生きることのヒントも与えてくれるだろう。
初版2019/09 白揚社/ハードカバー
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