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2019.12.09

書評<アラスカ探検記>

氷河と森林が土地を覆い隠す、過酷な自然環境を残す地、アラスカ。100年前、鉄道王が当時の一流科学者と自然保護活動家をとともに海岸調査のため旅した海路を、アメリカの作家が同じように旅をする旅行記。100年前に彼らが何を目撃したのを記しながら、その100年後に著者が何を見てたかを綴っていく。

厳しい自然がいまだ人を阻むアラスカ。だが、その地がアメリカ合衆国のものになった後、その海岸には黄金、豊富な漁業資源、近年では原油を求め、人々が移住していた。もともとその地で暮らしていた先住民族の暮らしは大きく変わるどころか、存続すら危うい状態になった。これがわずか100年前の出来事である。そうした開拓時代や第2次大戦を経て、アラスカは観光と石油産出地、そして地球温暖化を象徴する土地となっている。石油の価格下落とともに、衰退に向かう街。ここ100年で大幅に縮小した氷河。著者は100年前の旅と絡め、アラスカの自然と社会、そしてその変化を淡々と記していく。クルーズ船で土地に降り立ち、3時間ほどお土産店の周辺を巡るだけでは分からない、アラスカという土地のリアルな歴史とその姿。ことさら環境破壊や現地住民の貧困を訴えるのではない、リアルな体験が貴重なできる紀行本だ。

 

初版2019/08   青土社/Kingle版

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