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2019.12.07

書評<イスラム2.0: SNSが変えた1400年の宗教観>

西欧諸国がアルカイダやISといったテロ組織に対して”終わりなき戦争”を続けても、あいかわらずイスラム教が関連したテロが減らない昨今。テロの根本的な原因はどこにあるのか?それは貧困や教育でなく、イスラム教徒がインターネット時代になり、経典であるコーランに直接触れる機会が飛躍的に増加したからだと著者は説く。それが表題の「イスラム2.0」の世界である。本書は西洋的価値観に基づいた”テロとの戦い”の間違いを解説し、移民時代を迎えようとしている日本人に対し、イスラム教徒との共存の危険さを警告する。

イスラム教は根本的に神に従う宗教である。それは西洋で構築された民主主義、法治を基準にした国民国家で一般的な価値観とは相容れない、と著者は説く。それならばなぜ、この世界を構築する国家群の枠組みに今までイスラム教が収まっていたのか?それは経典であるコーランを一般教徒に説法するイスラム法学者たちが国家の権力者たちと”癒着”していたからだ。ここまでが著者のいう「イスラム1.0」である。前述のように、インターネットはイスラム世界をも変革した。ムスリムたちはコーランの教えに直接触れ、より”原理主義的”にイスラム教を解釈し、行動を始めているのである。それが今現在のヨーロッパや東南アジアで起きているリベラルとイスラムの摩擦の正体である。近代民主主義国家の「信教の自由」は、基本的人権の下に宗教をおいているからこその”自由”であり、神に従うイスラム教徒とは価値観が根本的に異なるのだ。本書にあるこうした解説は、イスラム教徒たちが本来の姿に戻りつつある現在において、非常に説得力がある。ヨーロッパのリベラルエリートの政治指導者たちがいかに「寛容であれ」と演説しようと、摩擦を経験した国民に響かないのは当然であろう。

翻って日本。著者は日本がすでにテロの”温床”になっていることを指摘する。平和ゆえの警戒感の薄さ、世界の状況への無頓着さを我々は自覚しなければなるまい。まして、日本人は自国民に対してさえ無神経だ。それが、イスラム教徒と本格的に対峙するとどうなるか?想像もつかない事件が起こるのも、そう遠くないのかも知れない。そう感じさせる一冊である。

 

初版2019/11    河出書房新社/河出新書

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