書評<アメリカン・セレブリティーズ>
初版2020/04 スモール出版/ソフトカバー
アメリカのセレブリティ、アーティストたちの動向は世界中から注目の的となる。アーティストは自らの生き方を楽曲に託し、ファンに訴えかけるとともに、様々なビジネスを展開し、リッチな生活を送る。また、アメリカのアーティストたちはフェミニズムや人種差別など、社会的・政治的問題に臆することなく向き合い、コメントするがゆえに、アメリカ社会の問題をそのまま映し出す鏡ともなる。本書は日本でもメジャーなセレブリティたちの活動を通して、アメリカのエンターテインメント業界や社会の動きを解説していく。
日本でも話題となる”#MeToo”や”文化の盗用”、”キャンセルカルチャー”という言葉はアメリカのセレブリティ界隈で生まれた言葉であり、アメリカ社会が何を問題にしたかはアーティストたちの生き方と発言そのものを知らないと理解しにくい。本書を読んでまず感じたのはこのことである。ネットのニュースでチラっと見ただけでは語れない、アメリカ社会の問題が潜んでいるのだ。本書はここ20年で差別や宗教、SNSに対して、アーティストたちがどのように向き合っているかが書かれているが、そこにはアメリカ社会に通底する問題と、新たに生まれる問題があることが理解出来る。庶民とは違う世界を生きるセレブリティたちだが、その移り変わりは見事にアメリカ社会の変化に連動している。非常に興味深い1冊である。
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