書評<戦車将軍グデーリアン 「電撃戦」を演出した男 >
初版2020/03 KADOKAWA/kindle版
第2次世界大戦の開戦初頭、フランスがドイツとの国境線に設けたマジノ線を機甲師団と自動車化師団で短時間で突破し、欧州の西部戦線の行方を決めたいわゆる”電撃戦”を考案し、指揮したのがドイツ陸軍のグデーリアン将軍である。早くから戦車に注目し、大戦間に自動車化した師団の形成を指揮したグデーリアンは、陸戦の歴史の中でも有名な理論家であり、卓越した指揮官でもあったというのが、戦史研究者やミリオタの認識であった。本書は最新の海外書籍を読み解くことで、そうした一般的な認識を覆し、新たなグデーリアン評の解釈を行っていく。
本書は先の「ロンメル将軍」に続く、ドイツ陸軍の有名な将軍の人物批評書である。グデーリアンの出生から彼の人生を追い、いわゆる”伝説”を検証する。陸軍の早急な自動車化を指揮したのはグデーリアンだけではないし、機甲師団を形作ったのも彼だけではない。先達ともいえる人物がいたのだ。第2次大戦後の戦場指揮にしても、卓越した指揮というよりは独断専行が目立つ。また「ナチス党と距離をおいていた軍人」という評価も、今となっては様々な証言により覆されている。グデーリアンはミリオタがイメージするような”完璧な将軍”ではなかったのだ。
本書はドイツ陸軍の歴史の重みを、新書のコンパクトのサイズで感じさせてくれる、歴史マニア、ミリオタ必読の書である。
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