書評<弾丸が変える現代の戦い方: 進化する世界の歩兵装備と自衛隊個人装備の現在>
初版2020/04 誠文堂新光社/ソフトカバー
元陸自のメディックである、戦場での医療に詳しい元陸自隊員による、陸自の個人装備に関する提言。各種弾薬とライフルが精緻な関係にあるがゆえに、弾薬は国産でならねばならないこと、国際的な射撃大会に出場した各国の軍隊との比較により、日本の個人装備の基本である5.56㎜ライフル弾が時代遅れになりつつあることなどが解説され、最後に著者が陸自の個人装備の更新の提言と、メディックの重要性について提言する。
一部ミリオタの間で話題になった本。残念ながら、著者が本題のライフルの話に入る前の枕話として語っている空自戦闘機の選定の問題から間違った認識であり、その後も疑問が残る仮定のままでライフルと弾薬の話が続く。ベトナム戦争時に採用されたM-16ライフルの欠陥説の例もこれまで語られてきた話とずれている。また、今や5.56㎜弾が必殺距離とする300m以内での戦闘は危険すぎるため、もっと遠距離戦闘を可能とする7.62㎜NATO弾のライフルの使用を著者は提言するが、日本の野戦や都市戦闘で、300mを超える射程が必要なのか?日本はイラクのような砂漠ではないし、アフガンのような不毛な山岳地帯ではないのだ。かように著者が語る”世界の潮流”は”日本固有の地形ゆえの事情”が考慮されていないように感じられるのだ。もちろん、陸自の普通科の装備が貧弱なのは明らかで問題は多くある。だが、著者の提言は個人的には主流でないと思える。
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