書評<月の科学と人間の歴史―ラスコー洞窟、知的生命体の発見騒動から火星行きの基地化まで>
初版2020/02 築地書館/ハードカバー
人類はその歴史を絵や文字を使って最初に記録し始めたそのときから、月を描いてきた。人類最古の絵画といわれるラスゴーの洞窟の”落書き”がそれだ。以後、人類は月を眺め続け、その存在の謎を問い続けた。望遠鏡を使って観測し、地図を作成し、軌道を予測し、その成り立ちを研究した。そして、1969年、ついに人類は月に降り立つ。そうした人類と月を巡る歴史から、人と月の関係、そして将来までを記した、幅広い分野に渡って月を解説するのが本書である。
夜空に輝く月は、星々とは明確に区別され、人類は常にその存在に意味をもたせてきた。やがて神話の時代から、科学の時代に移り変わったのは、望遠鏡の発明からである。ガリレオに代表される望遠鏡の製作者、使い手たちは、長い年月をかけて月を研究した。月の観測の歴史は、人類の文明の発展の歴史でもある。
本書はそうした科学的事実から、ちまた伝えられる伝説としての月と人類の関係にも触れている。月と犯罪の関係、あるいは男女の関係は今も信じている人が多そうだが、月が人類に及ぼす”引力”は、実は見た目ほどではないのだ。月に人類が到達した後の時代であっても、どこか存在自体がミステリアスな月を、科学とロマンの両方から詳細に記した、魅力的な本だ。
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