書評<明智光秀と細川ガラシャ>
初版2020/03 筑摩書房/選書
織田信長を討った武将、明智光秀の娘である細川ガラシャ。絶世の美女でもありながら、キリスト教信者であり、最期は非業の死を遂げた人物として、戦国時代の女性としては異例の知名度といってもいい人物である。本書は複数の著者が、海外の文献にもあたりながら、最新の研究による細川ガラシャの実像を明らかにしていく。
正直な話、呉座先生の明智光秀の実像の解説を目当てに本書を買ったのだが、クレインス,フレデリック先生をはじめとしたキリスト教関係の当時の書物を元にしたガラシャの解説などが存外に面白かった。美女で賢いという伝説は日本ではなくヨーロッパで広まり、逆上陸したこと。ガラシャが生きていた時代の、キリスト教を通したヨーロッパと日本の関係。ルネッサンスとプロテスタントの台頭により、力を失いつつあったカトリックの最後の砦の1つが日本だったことなど、意外な事実がどんどん飛び込んでくる。過大評価はいけないが、中世において、日本の存在はそれなりにヨーロッパでは知られていたということだけでも自分には目からウロコだった。たいへん興味深い歴史研究書である。
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