書評<現代ミリタリーのゲームチェンジャー 戦いのルールを変える兵器と戦術>
初版2020/06 潮書房光人新書/ソフトカバー
中東での対テロ戦争も一段落した感があるが、その間の中国の軍事力の増大、ロシアの軍事テクノロジー開発の進展が、アメリカ軍とその同盟国軍の大きな脅威となりつつある。なかでも従来の兵器のテクノロジーの延長戦ではない新兵器、”ゲームチェンジャー”が専門家の注目を集めている。極超音速ミサイルしかり、UAVしかり。だが、それは本当に戦争を変える兵器なのか?もしそうなら、ゲームチェンジャーと呼ばれる兵器を生み出せる組織とその仕組みはどうなっているのか?最新のテクノロジーの動向に詳しい専門家の入門書。
ミリタリーを語る際にも流行語があり、今現在は”ゲームチェンジャー”がその最たるものだろう。だが、その兵器は”より速く、より強く”が求められる兵器開発の常道と何が違うのか?我々は印象論で語ってはいないだろうか?そうした問いに答えるのが本書である。だが、本書の本質的な部分は兵器そのものにあるのではないと思う。”ゲームチェンジャー”を生み出す発想とは何か?そのキーテクノロジーはどう開発されたか?そうしたテクノロジーを生み出す、アメリカのDARPAとはどんな組織化か?本書はそうした問いに答える。これは業種を問わず、激しい競争にさらされる民間メーカーにも求められるものであろう。従来の製品を分析し、それを改良するだけではライバルに勝てない。発想の転換が必要なのだ。それは一本道ではなく、無駄な知恵とお金を費やすこともあろう。そうした工程を乗り越えてこそ、”戦闘、戦争を変える”ものが出来上がるのだ。そういう意味で、本書はミリタリー関連本でもあり、ビジネスの参考書でもある。
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