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2020.11.10

書評<イスラームの論理と倫理>

気鋭のイスラム研究者、飯山陽女史。自身もムスリムであり、”カリフ復活”を熱望するハッサン中田こと中田考氏。対照的な2人のイスラム研究者が、往復書簡の形で、テロやハラールなど、イスラム教が絡む事件や社会問題を論じる。

 

新旧2人のイスラム研究者の”往復書簡”というには程遠い一冊だが、かえってイスラム教に関する2人の考え方がよく分かる。例えばISの引き起こす無差別テロ。中田考氏は、ムスリムによるテロは根本的には貧困や差別、領域領民国家という、現代の西洋の価値観との摩擦によってもたらされるとする。その論理のおかしさを指摘されると「彼らは本物のムスリムではない」と逃げをうつ。その文章自体が迂遠で言い訳じみているが、結局のところ反権力とイスラム教への傾倒がイコールで結ばれる。対して飯山陽女史は、テロの根本的原因を聖典でコーランそのものの教えに求める。基本的に、西洋に端を欲する人権その他の基本的権利とイスラム教の教えには摩擦がある。”多様性”の名のもとに、両者を同じ価値観でまとめることなど出来ないと、飯山陽女史は説明する。近年のテロやヨーロッパでの移民との諍いを見ると、飯山陽女史の分析がしっくりくると感じる。

本書はこうした2人の価値観の違いを映し出す、ある意味残酷な本だ。国際的な争いごとを、アメリカと日本の権力者に原因を求めるのはもう古い、旧来の学者の姿であると痛感する一冊である。

 

初版2020/09  晶文社/kindle版

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