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2021.01.19

書評<弾道弾 (兵器の科学1)>

強力なロケットで宇宙空間にペイロードを打ち上げ、再突入体をマッハ20を超える速度で地上の目標に投射する弾道弾は現在のところ、人類が持つ究極の兵器である。また、強力な推力を生み出すロケット技術、大気圏突入に伴う超高温に耐えうる材料技術、数千㎞に及ぶ飛行を制御する誘導技術と、技術的にも最高峰の科学技術の固まりでもある。本書は弾道弾本体やそれに対抗するミサイル探知や防衛について、数式を用いながらも平易に解説する。

本書の著者は物理学者でもあり、ロシア製兵器にも精通している。なので弾道弾の特性を解説する例としてソ連(ロシア)製のミサイルを上げるのが本書の特筆すべき点だ。そうした技術的事例を通して、ミリオタや専門家が”知ってるつもり”の知識がいかにあやふやなものかを再確認させてくれる。また、弾道弾について学ぶとき、弾道や軌道とはそもそも数学と同一と呼ぶべきものであるくらい難解なものであるが、逆に言えばそれを多少なりともその基礎を理解出来れば、ネットに溢れる不正確な情報の真偽を確かめる参考になるだろう。現代兵器の知識を求めるなら、必須の一冊である。

初版2020/11  明幸堂/ハードカバー

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