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2021.09.27

書評<機龍警察 白骨街道>

 

機甲兵装と呼ばれるパワードスーツが軍や警察に普及している世界。搭乗者の脊髄と制御系を竜骨(キール)と龍髭(ウィスカー)で接続する特殊な機甲兵装を所有し、凶悪なテロなどの犯罪に立ち向かう警視庁特捜部は、外国人をそのパイロットとして雇用契約していることから、警視庁組織の中で浮いた存在でもあった。

その特捜部に課せられた今作の任務は、ミャンマーのジャングル奥深くにある紛争地域での犯罪人受け渡し。一方、日本ではその犯罪人が絡む国産の機構兵装開発に関連する汚職事案や京都財界の不正の捜査が展開され、ミャンマーでの激しい追撃戦と、巨悪を暴く金融捜査が同時に展開する。太平洋戦争時、無謀な作戦で多数の戦死者、餓死者を出し、白骨街道と呼ばれたミャンマーの地を、主人公たちは脱出出来るのか?官邸に巣食う病魔まで捜査の手を伸ばすことが出来るのか?物語は急展開していく。

 

「機龍警察」シリーズの最新作の舞台はミャンマー。多くの日本兵が眠る因縁の地で、マフィアや国軍など思惑の異なる武装集団たちが繰り広げる追撃戦は読者に息もつかせない激しい展開を見せる。一方で展開される、日本での防衛装備を巡る汚職事案。こちらは京都が舞台で、古都独特のねっとりと生臭い人間関係が物語に不穏さをもたらしている。ミステリマガジンでの連載中に、本作の舞台であるミャンマーで政変が起きてしまったため、著者が意図していたラストシーンになったかどうかは不明だが、不安定な地域を取り上げたゆえの急速な状況の変化、犯罪組織の跋扈、腐敗した政府と軍など、ジャングルからの脱出作戦は正義など存在しない絡みつくような闇の中を泳いでいるようで救いがなく、警察小説、アクション小説としてのカタルシスも少ない。それでも、読み応えのある一冊だ。

初版2021/08  早川書房/ハードカバー

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