« October 2021 | Main | December 2021 »

2021.11.28

書評<同志少女よ、敵を撃て>

ナチスドイツのソ連侵攻により、小さな農村に住む少女セラフィマの日常は奪われた。両親とともに虐殺される運命にあったセラフィマを救ったのは、ベテランスナイパーのイリーナだった。狩猟を日常にしていたセラフィマはイリーナに拾われ、彼女が教師を務める”女性狙撃手学校”の生徒になる。ソ連的な優等生、滅びつつあるコサックの末裔、NKVDの内部調査員など、様々な背景を持つ少女たちがスナイパーとして育ち、やがて地獄に放り込まれることとなる。

新人にして著名な賞を獲得した話題作。正直な話、戦記物やスナイパーの自伝などを読み漁っているミリオタには”どこかで読んだ話」”が多いのだが、全体として貫かれる「なぜ戦うのか」という普遍的なテーマと、隊員たちが互いに支えあう場面がこの物語を特別なものとしている。さらに、独ソ戦の最終局面の戦闘に参加する最後の120ページでのドイツのベテランスナイパーとの駆け引きは別格だ。知恵と、スナイパーが持つ独特”自分の世界の物語”を互いに読みあい、どちらがどのタイミングでトリガーを引くのか?生き残るためには一般兵士をどう騙すか?息をつかせない物語は、ミステリーとしても一級品である。

初版2020/11 早川書房/kindle版

2021.11.27

書評<ジェット旅客機進化論 ~Jet Airliner Technical Analysis>

第2次世界大戦の終戦を前にして、連合国の各航空機メーカーは戦時で急速に拡大した航空機開発・生産能力を民間市場に振り分けるべく、旅客機の開発を企画した。折しもパワープラントはジェットエンジンへ時代は向かっており、まずはイギリスのコメットが進空。そこから熾烈な開発競争と機体の高速化、大型化が進んでいく。本書はジェット時代のエアライナーを機種別に詳細に紹介、エアライナーがどのように進化してきたかを紹介していく。

本書は「月刊エアライン」の連載をまとめたもので、アメリカ、欧州、ソ連の旅客機を中心に1機種ずつ時代を追って紹介しつつ、旅客機がどのようにして現在の姿に”収斂”していくかをまとめて読める”クロニクル”というに相応しい本である。エンジンは黎明期のターボジェットから、高バイパス比のターボファンへ。高速化は超音速まで進むものの、効率が悪く航空市場は大量輸送を選ぶ。そしてエンジンや機体を構成する素材、そしてハイテク化により、双発で太平洋を横断出来る時代になった。その間には市場のニッチを埋めるべく、様々なアイデアを含んだ機体が世に送られたが、いまや大型旅客機メーカーはエアバスとボーイングの2社対決になっている。軍用機と違い、需要そのものも探っていかなければならない旅客機開発の困難さがよく分かる1冊である。

初版2021/09    イカロス出版/ソフトカバー

« October 2021 | Main | December 2021 »

My Photo
June 2022
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

Twitter


無料ブログはココログ