書評<ジェット旅客機進化論 ~Jet Airliner Technical Analysis>
第2次世界大戦の終戦を前にして、連合国の各航空機メーカーは戦時で急速に拡大した航空機開発・生産能力を民間市場に振り分けるべく、旅客機の開発を企画した。折しもパワープラントはジェットエンジンへ時代は向かっており、まずはイギリスのコメットが進空。そこから熾烈な開発競争と機体の高速化、大型化が進んでいく。本書はジェット時代のエアライナーを機種別に詳細に紹介、エアライナーがどのように進化してきたかを紹介していく。
本書は「月刊エアライン」の連載をまとめたもので、アメリカ、欧州、ソ連の旅客機を中心に1機種ずつ時代を追って紹介しつつ、旅客機がどのようにして現在の姿に”収斂”していくかをまとめて読める”クロニクル”というに相応しい本である。エンジンは黎明期のターボジェットから、高バイパス比のターボファンへ。高速化は超音速まで進むものの、効率が悪く航空市場は大量輸送を選ぶ。そしてエンジンや機体を構成する素材、そしてハイテク化により、双発で太平洋を横断出来る時代になった。その間には市場のニッチを埋めるべく、様々なアイデアを含んだ機体が世に送られたが、いまや大型旅客機メーカーはエアバスとボーイングの2社対決になっている。軍用機と違い、需要そのものも探っていかなければならない旅客機開発の困難さがよく分かる1冊である。
初版2021/09 イカロス出版/ソフトカバー
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