書評<日独伊三国同盟 「根拠なき確信」と「無責任」の果てに>
日本はなぜ太平洋戦争開戦に踏み切ったのか?開戦への経緯には様々な要因が絡み合っているが、本書は日独伊三国同盟成立までの歴史と、その同盟を調印することに関わった人物たちに焦点を当てる。いわば”外務書から見た太平洋開戦”である。
自分はいわゆるミリタリーマニアなので、太平洋戦争開戦までに至る経緯に関しては、陸軍・海軍を中心にした分析に関する知識しかなく、非常に新鮮に読めた。本書は三国同盟成立までの経緯をまとめているが、帝国政府に対して虚偽様々な策を弄して同盟への道を築いた外交官大島浩と、国際連盟脱退の際の演説で国民のヒーローとなった松岡洋右を中心に据えた人物批評の書、ともいえる。本書を読むと、強烈なドイツびいきであった大島浩、ヒステリックな言動で日本外交を惑わせた松岡洋右こそが、日本をアメリカとの無謀な戦争に至る道を作ったと早とちりしそうになる。それくらいに、彼らの行動と言動には影響力があったのだ。いまだに「軍部独走説」を唱える人もいるが、”戦争への道”はシビリアンである外交官も大きく関わっているのである。
翻って現在、とにかく日本と西欧の国を比べたがるジャーナリスト、無根拠な「日本はすごい」説を唱える作家など、大島や松岡に繋がるような人物をよく見かける。”外交の失敗”は”国民の失敗”であることを、我々はよく考えなければならない。
初版2021/11 KADOKAWA/kindle版
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