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2022.05.25

書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>

華やかなヨーロッパのサッカー界の中でも、屈指の人気と注目度を誇るバルセロナ。そして地元スペインのカタルーニャ州においては「クラブ以上の存在」といわれ、カタルーニャの社会に深く根ざしている。それはクライフというサッカーを変えた人物の一人が所属することで始まった。サッカー関係の重厚なノンフィクション作家として知られる著者が、長年に渡るバルセロナの取材をまとめ、バルセロナというクラブの発展と凋落の歴史を辿る。

 

バルセロナは、世界でもその動向が注目されるチームであり、チームの歴史を扱った本も多数ある。本書の特徴は、著者が20年以上に渡ってバルセロナのクラブハウスに出入りし、クラブの職員から会長まで、様々な階層の人たちをインタビューし、バルセロナというクラブの複雑さを読み解いていることであろう。さら著者はクライフへの単独インタビューの機会を「この日のためにサッカージャーナリストになったといっても過言ではない」と記すほどクライフへの思いが強くありながらも、クライフについて批判すべきところは批判するスタンスを取っており、その距離感のバランスが非常に優れている。ゆえにバルセロナの歴代会長に話を聞けるインサイダーでありながら、クラブのマイナスの側面を客観視し、チームの変質を描き出すことに成功している。さら本書ではサッカーのグラウンドやクラブハウスを超えて、バルセロナという街の変質、あるいはバルセロナと他のヨーロッパの国々(特にオランダ)との関係にも触れている。そうしなければ、バルセロナとクライフの愛憎半ばする関係を理解できないのだ。本書はクライフ以後のカタルーニャの歴史書でもある。

初版2022/04  カンゼン/kindle版

2022.05.24

書評<冷蔵と人間の歴史>

人類が文明を興し、調理や醸造を始めたとほぼ同時に、食物を冷蔵しようとする行為は始まる。初期は保存のためというより、王族が飲む飲料を冷やすという、嗜好性の強いものであった。地上と地下の熱量の差や気化熱など自然の物理現象を利用した冷蔵庫から、現在の我々の食生活を支える大規模な冷凍庫を搭載した船舶まで、本書は冷蔵と人間の歴史を辿る。

本書を読むと、まず驚くのが人類が冷蔵という行為を始める早さと、我々が現在使用しているような冷蔵庫の登場のギャップである。先に述べたように、歴史上、冷たい飲料は貴族しか手が出せない贅沢品であったものが、寒冷地から大規模な氷の輸送を経て、庶民が家庭用冷蔵庫を利用するに至る道は非常に長い。「物体を冷やす」という経験的な利用から、熱の移動という科学への発展。あるいは世界的な交通網の発達。人類社会の科学の発展とともに、冷蔵という行為は広まったことがよく理解できる。そして近代においては、大規模な寒冷地からの氷の輸送をはじめとして、冷蔵がギャンブル的な商売であったことも興味深い。本書は冷蔵という行為から見える人類史の歴史書ともいえるだろう。

 

初版2021/09    築地書館/ハードカバー

2022.05.23

書評<ザ・コーポレーション>

フィデル・カストロによる社会主義革命時、前政権に関わる人物をはじめとして多くの人間がキューバを脱出し、アメリカに渡った。そして彼らはときのケネディ政権下のCIAによるキューバ侵攻に参加することになる。だが後に”ピッグス湾事件”と呼ばれるキューバ侵攻は失敗。彼らはキューバ当局に拘束され、アメリカに追放される。軍隊と捕虜になるいう経験を経て、亡命キューバ人たちは絆を固くし、またCIAと関わったことで、アメリカ政府関係者との繋がりも継続されることとなる。アメリカで自由の身になった亡命キューバ人の一部たちはボリータ(数当て賭博)を生業とするマフィアとなり、ニューヨークとフロリダの暗黒街を跋扈することになる。本書は一人の”ゴッドファーザー”を中心に、キューバ・マフィアの成立と拡大、そして衰退を描くノンフィクションである。

マフィアの栄枯盛衰を描いたノンフィクションはあまたあるが、本書を特別なものとしているのは、「ザ・コーポレーション」と呼ばれることにあるキューバ・マフィアの特殊性にある。彼らはピッグス湾事件の辛酸を舐め、「いつか祖国をカストロから取り戻す」という”ロマン”を抱いているという共通点から団結力も強く、勢力はまたたく間に拡大した。さらにCIAはじめ政府との繋がりを持つ人物も多く、ケネディ兄弟の暗殺事件や、後の「イラン・コントラ事件」にも関わることとなる。ロマンや政治性を抱えた犯罪組織、魅力的な人物。生業である数当て賭博も動く金額は大きいが、庶民の楽しみを支えるものでもある。だが、それは暴力によって担保されたものであった。そして、麻薬犯罪に手を伸ばし始めたときから、ロマンは失われ、金銭と暴力にひたすら捉われた犯罪組織に変容していく。キューバの歴史、アメリカの組織犯罪の歴史、CIAの南米での暗躍、犯罪を取り締まる側の警察組織の汚職と苦悩。様々な物語が重なり合った重厚なノンフィクションである。

初版2022/02  早川書房/ハードカバー

2022.05.22

MIRAGEⅢC Completed

モデルズビット1/72ミラージュⅢC、完成しました。

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ミラージュⅢはフランスのダッソー社が開発した傑作ジェット戦闘機。スムーズな胴体とデルタ翼で超音速性能と優れた機動性能を実現。世界中の空軍に採用されました。ミラージュⅢCは初期型にあたり、イスラエル空軍の機体は中東戦争で実戦に投入され、Mig相手に多数の撃墜記録を残しました。

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キットはモデルズビットの新商品をストレート組み。先のミラージュⅢV-01と違い、こちらは「キッチリしたモデルズビット」。モールドは鋭く、パーツの合わせもさほど苦労することなく組み上がります。こちらも静岡ホビーショーへの持ち込みを考え、実質15時間くらいで完成させる必要があったため、荒い仕上げ。特に主翼と胴体の合わせ目の仕上げは反省することしきりです(シルバー塗装は特にアラが目立つ)。

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塗装は1960年代のイスラエル空軍仕様機を再現。全体をクレオスのクロームシルバー2を吹きつけた後、シルバーを複数パネル毎に塗装。最後にクリアーにて保護しています。このキットに付属するデカールの質も高品質で、エアインティークや胴体のレッドのラインなど、鮮やかなアクセントをつけてくれます。

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ロシアによるウクライナ侵攻の後、ウクライナ応援も含めて、ウクライナのメーカーであるモデルズビットのキットの製作を続けてきました。開戦当初、プラモ業界にも暗雲が立ち込めましたが、少なくともモデルズビットはすでにミラージュ2000Dの開発と発売の予告を開始しました。今後もウクライナ含めた東欧製キットを購入・製作することで間接的に支援していきたいと強く思っています。

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2022.05.21

MIRAGEⅢ-V01 Completed

モデルズビット1/72ミラージュⅢV-01、完成しました。

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ミラージュⅢV-01はフランスのダッソー社がミラージュⅢを元に開発、試作したVTOL機。1960年代、ソ連による航空基地への奇襲攻撃を大きな脅威としていた西側各国は、競って垂直離着陸が可能な戦闘機の開発を模索していました。ミラージュⅢV-01もその1つ。傑作機であるミラージュⅢの胴体を拡幅・延長し、小型のVTOL用のターボジェットを8機搭載することによりVTOLを可能とするはずでした。しかしながら、離陸可能重量や燃料搭載量など、実用的な戦闘機として使用する性能には程遠く、V-02とともに2機の試作のみで計画は破棄されています。

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モデルズビットのキットをストレートに製作。モデルズビットは製品により当たり外れが大きく、このキットは”外れ”の方。勘合は甘く、モールドはダルい、おそらくは簡易インジェクションなのでしょう。しかしながら、特徴的な背中のインティークを再現出来るエッチングパーツや細かな姿勢制御用空気噴出孔用にパーツなど、ⅢV-01の特徴を的確に捉え、再現しているとはいえます。静岡ホビーショーに持ち込む都合もあり、完成優先で組み立てました。

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塗装は全体をクレオスC-8シルバーで塗装、その他アイアンやチタンなど各種の金属色を使って、アクセントをつけています。キットの方は苦労しましたが、デカールは非常に高品質であり、ささっとフランスの戦闘機然とした立ち姿にすることが出来ます。

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フランスの超音速戦闘爆撃機はラファール実用化まで”ミラージュⅢの呪縛”あるいは”デルタ翼の呪縛”から逃れられませんでした。特に超音速機に最適な形状であるデルタ翼機でVTOLを実現することは、たいへんハードルが高いものと言わざるをえないでしょう。それでも、ダッソー社の技術的蓄積とフランスの国防予算の都合を考えればこうするしかなかった。そんな歴史的機体です。たいへんハードなキットでしたが、実質的にたった1機をキット化するのですから、開発してくれるだけありがたい。そんなことを感じた製作でした。

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