「トップガン マーヴェリック」を見てきた
「トップガン マーヴェリック」公開から1週間経って、2回目も見たのでそろそろ感想をまとめておきます。
ストーリーは完全に前作「トップガン」の続編。前作から30余年経ち、マーヴェリックは数々の勲章など授与されるなどの功績を上げながら、今も大佐のまま。現在は極超音速機<ダークスター>のテストパイロットの任に就いている。そこへ海軍からの呼び出し。とあるならず者国家が建設中の核関連施設を攻撃するため、トップガンの卒業生を集めてエリートパイロットのチームを結成する。マーヴェリックにはその教官の任に当たれというのだ。チームメンバーの候補生の中には、かつての相棒であるグースの息子、ルースターもいる。最優秀パイロットであっても、教官向きではないマーヴェリック、「死んだ相棒の息子」以上の因縁がありそうなルースターとの関係、困難で危険な訓練。そうした要素が交錯しながら、物語は最終盤に向かっていく。
映画のオープニング、「デンジャーゾーン」をBGMに始まるデッキ・オペレーションのシーンからして、「トップガン」が大好きな大人たちの期待に応える映画でした。観客にまで高Gを感じさせる飛行シーンは、やはり実機で撮影しなければ出ない迫力。実機に取り付けたカメラで限られれた角度で撮られた映像を編集しているからこそ出来る演出。個人的にCGで作る不自然な角度や光加減の映像を実写映画で見ると興ざめするのですが、この映画にはそんなシーンもなし。とにかく、アクションシーンは珠玉の出来です。さらに、ときどき挿入される「過去の名作の名シーンのオマージュ」に、にやりとさせられます。今回の実戦任務そのものが”エスコン”あるいは”エリア88のオペレーション・タイトロープ”によく似ていて、日本人としてはちょっと嬉しい感じです(こちらは偶然でしょうが)。
いっぽうでドラマシーンもグっとくる。自分は前作<トップガン>の恋愛パートなんかは早送りしてビデオ見てたタイプですが、この映画はそんな必要まったくなし。特に製作にも関わっているトム・クルーズが「彼なしではトップガンの続編はありえない」と言わしめた、アイスマンことヴァル・キルマーの出演シーン。時間としては短いですが、物語のターニングポイントとして観客に強力な印象を残します。喉頭がんで声を出すのも苦しいアイスマンが、キーボードで「過去は水に流せ」と打って指さすシーンの演出は役者ヴァル・キルマー本人の境遇とも重なり、今後語り草となる名シーンだと、個人的には思います。
ちなみに、自分がこの映画で一番好きなシーンは、敵のトムキャットを強奪してからのマーヴェリックとルースターのやり取り。
マーヴェリック「無線で空母と連絡を取れ」
ルースター「やってるが、無線もレーダーもうんともすんともいわない」
マーヴェリック「サーキットのUHF-2をオンにしろ」
ルースター「300あるサーキットの中から?」
マーヴェリック「キミの親父さんに聞けよ」
このシーン、今までマーヴェリックがルースターの前で口にしなかったグースのことに触れるばかりか、ジョークのネタにする。ルースターのことを「父親代わりをしてた、死んだ相棒の息子」ではなく、「後席をまかせられる相棒」と認めたからこそ出来るやり取りでしょう。
最後に。この映画は、いくつかの言葉がキーワードとして繰り返されます。「それは今日じゃない」「考えるな。行動しろ」など。特に「それは今日じゃない」はこの映画のテーゼでしょう。無人機の実用性が高まりつつ現在、危険で、パイロットのウデがものを言う戦術戦闘機の時代が次第に終わりつつあること(完全になくなることはないでしょうが)。社会においても軍隊においても規律や政治的正しさがより重要となり、マーヴェリックのような優秀だが無鉄砲な人間の居場所がなくなりつつあること。主演のトム・クルーズが年齢を重ね、少なくとも激しいアクションシーンにおいては主役を張るのは難しくなってきていること。そういったアレコレに抵抗することこそが、この娯楽映画にこめられた思いでしょう。あらためて、素晴らしい娯楽映画だと思います。
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