書評<図解入門 最新 ミサイルがよ~くわかる本>

ミサイルのどのような構造をしていて、どのような誘導方式や発射方式があるのか?ミリオタでも知ってるようで理解していない、現代兵器の象徴である各種ミサイルのベーシックな知識を、分かりやすく解説するミサイル入門。

北朝鮮が次々と弾道ミサイルを打ち上げる昨今、プライムタイムのニュース番組に「ロフテッド軌道」などというマニアックな言葉が飛び交う時代。だが、毎月「軍事研究」を愛読するミリオタたちも、意外と基本的な知識を質問されると、答えが出てこないものだ。本書は空、艦、陸と様々なプラットフォームから発射される各種の誘導ミサイルの基本的な知識を図解で解説するものである。著者は現代兵器解説の第一人者であり、そこにはマニアックな知識も盛り込まれる。入門といいながら、ミリオタにも復習になり、ためになる本だ。

初版2017/07 秀和システム/ソフトカバー

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書評<だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」>

違う国、民族なので当たり前なのだが、韓国国民のメンタリティーは、とにかく分かりにくい。ゆえに彼らを蛇蝎のごとく嫌い、ヘイトスピーチを繰り返す輩は絶えないし、一般ピープルの好感度も下がるばかりだ。そのメンタリティーの根源はどのような価値観の下、形成されているのか。前大統領の朴槿恵を巡る崔順実ゲート事件で、韓国国民はなぜあれほど盛り上がり、司法と議会はなぜ弾劾という判断を下したのか?気鋭の韓国学者である著者二人が対談形式で、それを解説していく。

例えば韓国の国民はなぜ、あれほど歴史にこだわり、もはや偽史と言われても仕方のない”物語”を作り出すのか?著者たちは殻国国民が事実ではなく「あるべきだった歴史」を構築し、それを「事実」として振る舞うことを指摘する。日本と「共通の歴史認識」を探そうとしても、すれ違いばかりで終わるわけだ。本書はこういった隣国の国民、あるいは政府や司法とのすれ違いを解説していく。それは論理的であり、しごく納得のいくものだ。そうしたすれ違いをきちんと確認したうえでの外交交渉、あるいは民間交流をなすべきなのに、一部で過剰に隣国意識や贖罪意識をもつ日本人がいるので、話がどんどん複雑になっていくのだ。本書はドライに、また客観的に隣国との外交関係あるいは距離感を見つめた本であり、ネットで見かける「おかしな韓国のお話」に過剰反応するのが馬鹿らしくなる本でもある。


初版2017/05 講談社/ソフトカバー

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書評<ザ・カルテル>

メキシコは最大の麻薬消費地であるアメリカと国境を接しており、中米の麻薬生産国との中継点の役割を果たす。ゆえに、そこには違法で巨大な利益が発生し、それを巡ってカルテルと呼ばれる麻薬商人たちが縄張り争いを繰り返し、メキシコ各地を殺戮の場としていた。DEA捜査官アート・ケラーは麻薬マフィアの大親分に200万ドルの賞金をかけられながら、メキシコ当局と協力し、カルテルの幹部たちの逮捕に奔走していた。本書は、警察など歯牙にもかけない暴力をふるう麻薬マフィアたちとの30年戦争の物語である。

本書は麻薬を巡る、圧倒的な暴力と殺人の物語である。もちろんフィクションだが、麻薬商人、取り締まり当局、ジャーナリスト、貧民などが直面する殺戮がフィクションではないことは、冒頭で4ページに渡ってメキシコで殺されたジャーナリストたちへの弔辞が証明している。もはやアフリカや中東での紛争、テロに匹敵する残酷な暴力と殺人が、新興の経済国としても知られるメキシコで繰り広げられているのだ。
本書はまた、麻薬を巡る30年に渡る戦争の歴史書でもある。エスカレートする暴力に対抗するため、武装は限りなく軍隊に近づき、逮捕ではなく暗殺が優先される。9.11同時多発テロをはさみ、アメリカが変貌していく様も描かれる。巨大な富を巡る駆け引きと、殺人、そしてわずかな光明。残酷で、鮮烈な描写で、読者に読むのを止めさせない、圧倒的な物語だ。

初版2016/07 角川書店/角川文庫

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書評<機龍警察 狼眼殺手>

量子通信を新たな通信インフラとして構築する巨大プロジェクト「クイアコン」。日本と中国の巨大企業と官僚がプロジェクトに絡み、甘い汁を吸おうとする輩が群がっていた。その疑獄を追求する捜査二課は、セクションの壁とプライドを捨てて、合同捜査を特捜部に持ち込む。合同捜査に着手した特捜部だが、次々と関係者が暗殺されていく。残されていたのは、カトリックの聖人のカード。浮かび上がってきたのは、アイルランドのテロリスト集団の中でももっとも凶悪な暗殺者だった。特捜部は疑獄と彼女に対し、どのように立ち向かうのか?”真の敵”が姿を現しつつあるシリーズ、第5弾。

量子通信でパワードスーツと搭乗員の脊髄を繋ぎ、脅威の機動性を発揮する兵器、通称”キモノ”。SFの要素と警察小説の要素が絡み合い、抜群の面白さを誇る<機龍警察>シリーズ。本作も面白い、面白いのだが、まるっきり警察小説であり、テロリスト狩りの物語である。いわゆる経済犯罪の地道な捜査と、テロリストとの追撃戦がメインであり、”キモノ”はまったくといっていいほど登場しない(笑)。”キモノ”はもちろん重要なテーマで、物語の根幹なのだが、ガジェットの1つになりつつある。次作は”キモノ”の活躍にも期待。

初版2017/09   早川書房/ハードカバー

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書評<人類はなぜ肉食をやめられないのか>


我々人類は”雑食”であり、肉も野菜も食べるが、250万年前の祖先たちは狩猟採集を中心とした生活を営んでいた。にも関わらず、肉食は現代に生きる人類にとって最大の楽しみであり、栄養源となっている。いわゆるベジタリアンの人々もいるが、その割合は欧米で約3%であり、圧倒的な少数派である。人類はその摂取量が過剰になって健康を害するまでになっても、肉食をやめられない。本書はその理由を歴史、栄養学、宗教や畜産業まで広く探り、解き明かしていく。

ベジタリアン、あるいはビーガンと呼ばれる菜食主義者の食事にも、大豆などを原料とするいわゆる”疑似肉”が登場する。宗教、健康、タブーなど様々な理由で肉を忌避する人々さえ、肉に対する愛を止められない。それが著者が本書を執筆する原点となる。人類が今の人類になるために、カロリーとタンパク質が豊富な肉は欠かせなかった。本書は肉食を人類が愛する理由を歴史から産業まで広げ、解説していく。現在ではその摂取量は少なくとも先進国では過剰であり、肉食を減らす時代にきているというのが著者の結論だ。それでなくても発展途上国の肉の摂取量が拡大して肉の価格は上がり、大量飼育される家畜は地球温暖化の原因ともなる。
しかしながら、即製飼育される豚・牛・鶏と同じカロリーを取ろうとすれば、野菜各種を大量に摂取せねばならず、ベジタリアンの生活は逆にコストがかかることとなる。世界の格差が広がる今、欧米のビーガン生活は金持ちの趣味となりつつある。著者にそのことを問うてみたい。

初版2017/06 インターシフト/ソフトカバー

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書評<ゲームの王国>

1970年代前半、王政が倒れ、不正選挙による民主化が失敗して不安定な独裁が続くカンボジア。本作の主役は、農村に生まれながらも、天賦の知性を持つムンタックと、ポル・ポトの隠し子であり、流転の幼少期を過ごす少女ソリア。二人は奇しくも、クメールルージュの革命が成った日に出会った。そして2人は暗黒の時代を彼らなりに生き抜こうとする。そしてそれは、彼彼女が壮年になった時代まで続く物語の始まりであった。

「“伊藤計劃以後"という時代は本作の刊行によって幕を閉じる。」このコピーに見事に引っかかって、上下ハードカバーの本書を購入。前半はカンボジアの貧しい農村と天才少年の成長と、秘密警察から逃げ続ける聡明な少女の成長を描き、決定的な衝突までを描く。後半はときを2030年まで移し、ソリアが正しいことを為すために政権を獲る直前が描かれ、そこで脳の活動を操るゲームが登場し、物語がSFっぽくなる。
非科学的な迷信に支配された農村の、それでいて平和な生活と、クメールルージュ革命の恐怖が少年の目線で描かれる前半は非常に瑞々しく新鮮だ。どこか遠い世界の革命が音を立てて近づいていく様子は回想録を読むようである。それに対比して、後半は脳科学と政治のストーリーとなり、虐殺を生き抜いてきた男女の哀しいすれ違いが描かれ、ミステリーの要素が多くなる。様々な面を見せながら、物語は終焉に向かう。
一見散漫な登場人物と技術要素がカッチリ噛み合う物語の組み立ては見事であり、”ゲーム”という言葉に何重の意味を持たせた主題の追及も非凡さを感じさせる。最新のテクノロジーが登場しながら、バラ色の未来があるわけでもなく、現代という平原が続く様も、極端なカタルシスがないと分かりつつある”今”に相応しい物語だ。個人的には、次作はもう少しSF要素が強い物語を期待する。


初版2017/08 早川書房/ハードカバー

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書評<新版 日本のルィセンコ論争>


ソ連の生物学者、ルィセンコは、1930年代に小麦の生育段階の温度変化によって農作物を増産できるとの理論をはじめ「獲得形質は遺伝する」とする唱え、主流であったメンデル理論を否定した。この理論は実験による検証を経ないままスターリン政権の庇護を得て、スターリンはルィセンコに批判的な学者を弾圧、科学が政治に捻じ曲げられただけではなく、農業生産に大損害をもたらした。
日本にもその学説が上陸し、特に太平洋戦争敗戦後、共産主義の台頭ともに生物学会と農業に混乱をもたらした。日本でルィセンコ理論が台頭していった過程を、当時の科学者たちの問題意識や議論を精緻に追うことで描きだす。

本書は1967年に刊行されたものに、現代の解釈を加えた新版であり、いわゆるルィセンコ学説と現代のエピジェネティクス理論の違いを踏まえたうえで、当時の生物学会の状況を知ることができる。
ルィセンコ学説が日本に紹介された当初は、科学的な論争だった。それが共産主義と戦後の政治状況に絡み合い、「絶対的に正しいもの」に変質していく様が見てとれる。それはやがて”農民たちをオルグする”という政治と科学が結びついた異様な運動となった。だが、実験実証を伴わない机上の空論は失敗し、分子生物学の発展によりルィセンコ学説は消え去っていく。再現実験を伴わない科学とイデオロギーの結びつきがいかに危険か、そしてその失敗を取り戻すためのコストが高くつくことを本書は示唆している。その深刻さは、50年を経た今でも色褪せない教訓である。


初版2017/07(新版)  みすず書房/ハードカバー

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書評<ゲートSEASON2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり〈1〉抜錨編>

銀座に開通した異世界への「門(ゲート)」。剣と魔法の世界の帝国を自衛隊の火力で退け、異世界でゲートを中心に自治領を確保した日本であったが、異世界の各国との関係、また異世界への進出を求める世界各国との関係など、とても安定した状態を築いたとはいえない状態である。よって、自衛隊に求められる役割もより大きくなり、海自の艦船も極秘に活動していた。異世界を巡る物語、第2シーズンの始まりである。

剣と魔法の世界を、現代兵器で制した自衛隊。本書は主人公も舞台も転換した第2幕である。主役は海自の潜水艦と潜入要員であり、異世界の大型海棲生物と戦い、中世の櫂船を率いて戦う。正直言って地味な駆け引きである。幼稚と言われようと、中二病と言われようと、ゲートの魅力は「異世界で圧倒的な火力を見せつける」であったと思うので、今のところ、そうした爽快感というか、カタルシスはない。今後の展開に期待だ。


初版2017/07 アルファポリス/ソフトカバー

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書評<徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男>

1994年のJリーグファーストステージを制したサンフレッチェ広島。23年を経た2017年開幕時、その当時の所属選手たちの多くは指導者や監督となり、Jリーグに貢献している。彼らはサンフレッチェの前身であるマツダおよびJ開幕当時のGMであった今西和男がスカウトしてきた男たちであった。日本サッカー界の伝説の一人、今西和男の半生を追うノンフィクション。

サンフレッチェサポーターにとって、今西和男は歴代の選手や監督よりもカリスマ的な存在なのかも知れない。当時としては先進的な戦術を採用する監督を招聘、地方チームに栄冠をもたらしたGM。広島で被爆した今西は脚が不自由なのにも関わらず、ファイト溢れるDFとしてプレイ。引退後もマツダで独身寮の管理人として社会人のキャリアを積んだ彼は、チームに何が必要かを学び、人間味溢れる魅力で人々を率いた。本書の前半は、いわば今西の”栄光への奇跡”かもしれない。
しかし、本書の中心は後半の岐阜FCでの苦難である。縁もゆかりもない土地で、破綻寸前のサッカークラブのGMを引き受け、社長まで務めるものの、財界や政界、果ては”日本サッカー界の発展”という共通目標を持つサッカー協会に翻弄され、最終的に解雇された今西。レジェンドの晩節のキャリアとしては、あまりにも悲痛な事実。地方自治体と地方経済界とJリーグの歪な関係がそこには見てとれる。本書は単なるレジェンドの半生の物語ではなく、告発の一冊である。

初版2016/06 集英社/ハードカバー

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書評<世界の駄っ作機8>

航空機の技術の急速な発達は、多くの傑作機を生むと同時に、多くの駄作機を生んだ。コンピューターによるシミュレーションも、CFDもない時代、手探りで技術開発していた時代の航空機たちを紹介していく。

軍事評論家、岡部いさく氏のライフワーク、第8巻。よくもネタがつきぬものだと思う。本作は「駄作エンジンが駄作機を生む」という法則が当てはまる航空機が多かった気がする。X型16気筒だのH型16気筒だの、ハイテクなんだかよく分からないエンジンたちもまた、技術の発達期ゆえの試行錯誤の結果なのだろう。相変わらず楽しめる1冊である。

初版2017/07 大日本絵画/ハードカバー

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